この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第168章 憧れと恐れと~30年前の後悔と今、私が思うこと~
この辺り、実に複雑な心境である。読み専であれば、
ー何て面白い小説に巡り会えたんだ!
それだけで済むのに、書き手であるばかりに、やはり自分には手の届かない高嶺の花的な才能を前に尻込みしてしまうのである。
このことで思い出したのだけれど、もう二十年近く前、私が総合文芸同人誌「コスモス文学」に所属していた頃の出来事だ。
多分、江戸を舞台にした短編時代小説だったと思う。「望郷」という作品が「コスモス文学新人賞奨励賞」を受賞した。「コスモス」は全国規模の同人誌で、会そのものが年に四度、「新人賞」「新人賞奨励賞」などを募集していた。新人と名は付いても、要は普通の文学賞で何度でも受賞のチャンスはある。
私は入会以来、何とか入賞したいと願っていて、その「望郷」での入賞が初めての受賞だった。
その時、同じ短編小説部門で最優秀に当たる新人賞を取ったのが年齢も近い、若い女性だった。タイトルまで鮮明に覚えている。「天にてむすばれし」というタイトルだった。
キリシタンの青年と吉原の遊女の悲恋らしい。ーらしい、というのは私がその作品を読んだことがないからである。
タイトルも内容も、とても惹かれるものを感じた。読みたいと思ったが、一方で読むのに抵抗もあった。抵抗というよりは、怖れという感情が近いかもしれない。
何が怖いかといえば、その作者の才能を見せつけられるのが怖かったのだ。私は奨励賞であり、次点だった。その作品は最優秀である。
ー何て面白い小説に巡り会えたんだ!
それだけで済むのに、書き手であるばかりに、やはり自分には手の届かない高嶺の花的な才能を前に尻込みしてしまうのである。
このことで思い出したのだけれど、もう二十年近く前、私が総合文芸同人誌「コスモス文学」に所属していた頃の出来事だ。
多分、江戸を舞台にした短編時代小説だったと思う。「望郷」という作品が「コスモス文学新人賞奨励賞」を受賞した。「コスモス」は全国規模の同人誌で、会そのものが年に四度、「新人賞」「新人賞奨励賞」などを募集していた。新人と名は付いても、要は普通の文学賞で何度でも受賞のチャンスはある。
私は入会以来、何とか入賞したいと願っていて、その「望郷」での入賞が初めての受賞だった。
その時、同じ短編小説部門で最優秀に当たる新人賞を取ったのが年齢も近い、若い女性だった。タイトルまで鮮明に覚えている。「天にてむすばれし」というタイトルだった。
キリシタンの青年と吉原の遊女の悲恋らしい。ーらしい、というのは私がその作品を読んだことがないからである。
タイトルも内容も、とても惹かれるものを感じた。読みたいと思ったが、一方で読むのに抵抗もあった。抵抗というよりは、怖れという感情が近いかもしれない。
何が怖いかといえば、その作者の才能を見せつけられるのが怖かったのだ。私は奨励賞であり、次点だった。その作品は最優秀である。