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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第168章 憧れと恐れと~30年前の後悔と今、私が思うこと~
 それは、自分は自分にしか書けない物語があると、知っていることだ。それはもちろん、自分に才能があるとか、そういう意味ではまったまくない。
 どんなに駄作であったとしても、自分にしか出せない作品のオリジナリティー、個性とも言い換えられるだろう。
 恐らく、○○で活躍されている皆さんにもその数だけの物語があり、その数だけのオリジナリティーをお持ちに違いない。書き手、作品の個性だ。
 それは作品の完成度とか、受賞できるレベルの作品かどうかという次元とはまったくかけ離れたところの問題である。
 だが、長年、アマチュアとしてこの道を歩いてきた私は知っている。大切なのは作品の完成度だけではなく、その人が書き手として持っている持ち味だと。
 だから、多少の怖れがあったとしても、素晴らしく、なおかつ興味をそそられる作品ならば読んでみる。
 たとえ、どれだけその作品に圧倒されたとしても、恐れよりはむしろ
ー自分も頑張って、こんな風な作品を描きたい。
 というように恐れを憧れに昇華する。
 もちろん、「こんな風な作品」というのは、この作品と同じようなという意味ではない。「この作品のように読み手の心を動かし、満たされた気持ちにできる」作品ということだ。どれだけ優れていても、模倣や真似をした作品は読み手の心を動かせない。まず、それ以前に、自分自身が書いても納得できないだろう。
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