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捨て犬
第20章 涙出てきちゃいました

仕方なく
ひとりずつ風呂に入り終え
俺は
テーブルにケーキを置いて
エミを後ろから抱きしめた


ロウソクに
火をつけ

電気を消す


「エミ、消していいよ」


「ふぅ〜〜〜…」


エミが火を吹き消すと同時に
部屋は闇に包まれた


「エミ、こっち向いて」


真っ暗なまま
エミの頬に触れながらする
くちづけは

甘い


静かな部屋に
キスの湿った音だけが響くと
もうこのまま
暗闇に包まれていたいとさえ思うほど
心地いい…

エミの笑顔が
見られたということだけで
こんなにも
心が満たされるなんて
不思議だ


二人きりでさ
ずっといような

ずっとずっと
側にいてくれよな


「カズマ…」


「エミ…」


こんな穏やかな時間が
これこらもずっと
過ぎていく


この時
俺はまだ
そんな風に思っていたんだ


あんな事が起きるまでは




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