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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
―お前が猫を可哀想だと思う心そのものは尊く大切なものだ。でも、お前が猫に与えていた食べ物は、私やお父さんがお前らのために必死で働いて得たものなんだ。私もお父さんも猫に食わせるために働いてるんじゃない。可愛いお前たちを立派に育てるために働いてるんだよ。
 母が言い終わらない中に、梨花が声を上げて泣き出した。
―ごめんなさい。お母さん、私が間違ってた。猫が幾ら可哀想でも、お父さんやお母さんが私のために用意してくれたご飯を猫にあげるべきではなかったのね。嘘ついて、お母さんを騙してまで、してはいけないことだった。
 母に抱きついて泣きじゃくる梨花の背を、母は優しく撫でていた。
―判ったら良いんだよ。どれ、頬を見せてごらん。
 母はそう言って、梨花の少し紅くなった頬をいつまでもさすり続けた。
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