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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
昼間は隣家の女房に任せておけば何とかなるし、ソルグクもこれまでよりは少し早めに帰るようにすると言っている。父の世話さえちゃんと見てくれる人がいれば、これで梨花は安心して働きに出られる。
梨花が働きにゆくと告げ、父に暇乞いをした時、父の眼にはまたも涙が浮かんでいた。
―海棠よ。父ちゃんのために、とんだ苦労をかけちまったなぁ。
物言えぬ父が滂沱の涙を流して、そう心で語りかけていた。
奉公先のお屋敷は、家からはかなり離れている。漢陽でもとりわけ賑やかな辺りに宏壮
な屋敷を構える商人尹(ユン)北斗(ボクドゥ)の邸宅だった。
尹北斗は漢陽でも屈指の大商人である。北斗と今一人、猛威徳という凄腕の商人がおり、この二人が都の経済を掌握している―とまでいわれていた。
この猛威徳こそが、実の父林成水を殺した憎き仇であることは既に梨花も知っている。
梨花が働きにゆくと告げ、父に暇乞いをした時、父の眼にはまたも涙が浮かんでいた。
―海棠よ。父ちゃんのために、とんだ苦労をかけちまったなぁ。
物言えぬ父が滂沱の涙を流して、そう心で語りかけていた。
奉公先のお屋敷は、家からはかなり離れている。漢陽でもとりわけ賑やかな辺りに宏壮
な屋敷を構える商人尹(ユン)北斗(ボクドゥ)の邸宅だった。
尹北斗は漢陽でも屈指の大商人である。北斗と今一人、猛威徳という凄腕の商人がおり、この二人が都の経済を掌握している―とまでいわれていた。
この猛威徳こそが、実の父林成水を殺した憎き仇であることは既に梨花も知っている。