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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
ひと月前、町中で梨花の危急を救ってくれたのは、尹家の嫡子南斗であった。その事実は、尹家の屋敷での辛い女中奉公に堪える梨花に、明るい希望を抱かせた。
留守がちな当主北斗の代理として、南斗は多忙な日々を過ごしていると聞く。そのせいか、その後、南斗と屋敷内で出逢うことはなかった。
が、南斗がこの同じ屋敷に起居していると考えるだけで、梨花は幸せな心持ちになれた。そのことは、この屋敷に来てから失っていた梨花の持つ本来の朗らかさを取り戻させ、梨花はこれまで以上に奉公に精を出した。
他の女中たちが厭がる雑用も率先して引き受け、女中頭のグミョンからお小言を貰う回数も日を経るにつれて減ってゆく。
梨花に眼をつけているらしいあの家僕は、依然としてしつこく言い寄ってくるものの、梨花はできるだけ一人にならないように心がけ、同年輩の女中たちと行動を共にするようにした。
留守がちな当主北斗の代理として、南斗は多忙な日々を過ごしていると聞く。そのせいか、その後、南斗と屋敷内で出逢うことはなかった。
が、南斗がこの同じ屋敷に起居していると考えるだけで、梨花は幸せな心持ちになれた。そのことは、この屋敷に来てから失っていた梨花の持つ本来の朗らかさを取り戻させ、梨花はこれまで以上に奉公に精を出した。
他の女中たちが厭がる雑用も率先して引き受け、女中頭のグミョンからお小言を貰う回数も日を経るにつれて減ってゆく。
梨花に眼をつけているらしいあの家僕は、依然としてしつこく言い寄ってくるものの、梨花はできるだけ一人にならないように心がけ、同年輩の女中たちと行動を共にするようにした。