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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第6章 兄の心
「今日は、ご挨拶に伺ったのです。海棠とのことについて、ご家族の方々にお話しさせて
頂ければと思っています。こちらは、お父上(アボニム)に差し上げて下さい」
 南斗は気を悪くする風もなく、穏やかな表情で淀みなく話した。その落ち着き払った様子が、かえってソルグクの苛立ちを煽った。
「そんなもので妹の気を惹こうってか? 見え透いた魂胆だな」
 清潔な白い布で包まれた四角い包みは、恐らく薬か滋養のある食べ物に相違ない。
 尹家の若さまが土産に持参するほどだから、ソルグクのような貧乏人が一年汗水垂らして働いたとしても、手に入れられないほど高価なものだろう。
 何故、何故なんだ?
 ソルグクは心の中で血を吐くような想いで叫ぶ。
 何故、自分では駄目なのだろう。梨花が選んだのは幼い頃からずっと一緒にいたソルグクではなく、ある日突然現れたこの男なのか。
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