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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
どうせ子ども一人、縛らずとも逃げられぬと油断しているのか、梨花は手脚を拘束されているわけでもなかった。
男がヤラ下がった表情で梨花の前に酒瓶を差し出した。
「酒を注げ」
梨花は言われたとおり、素直に酒瓶を受け取る。
新顔の男が傍らのミンスに言った。
「それにしても、綺麗な子だな。売り飛ばすには勿体ねえようだ」
「何を考えるんだ、お前は。まさか、こんなガキを玩具にしようなんて考えてるんじゃないだろうな」
ミンスが露骨に顔をしかめる。
「幾ら何でも幼すぎる」
小柄な男もしきりに頷いている。
男たちは今や、完全に梨花から注意を逸らしていた。梨花はそのほんのわずかな隙を見逃さなかった。袖から小さな紙包みを出し、そっと酒瓶の中に中身を紛れ込ませる。白いさらさらとした粉はすぐに安酒に溶けた。
男がヤラ下がった表情で梨花の前に酒瓶を差し出した。
「酒を注げ」
梨花は言われたとおり、素直に酒瓶を受け取る。
新顔の男が傍らのミンスに言った。
「それにしても、綺麗な子だな。売り飛ばすには勿体ねえようだ」
「何を考えるんだ、お前は。まさか、こんなガキを玩具にしようなんて考えてるんじゃないだろうな」
ミンスが露骨に顔をしかめる。
「幾ら何でも幼すぎる」
小柄な男もしきりに頷いている。
男たちは今や、完全に梨花から注意を逸らしていた。梨花はそのほんのわずかな隙を見逃さなかった。袖から小さな紙包みを出し、そっと酒瓶の中に中身を紛れ込ませる。白いさらさらとした粉はすぐに安酒に溶けた。