この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第7章 哀しい現実
ジュソンが洟をグズグズさせているので、ソルグクは自分の使っている手ぬぐいを出してやった。
ちんと洟をかんでから、ジュソンは再び話し出す。
「関係ない? 本当にそう思うのですか? こちらの娘さんが実は、その兵曹判書、林大監さまのご息女だったとしても、あなたはそう言えますか」
「なっ」
ソルグクは言葉を失う。
「妹が、海棠が兵曹判書の娘だって? そんなことが―」
あるはずがないとは到底、口にできなかった。
ソルグクの記憶が巻き戻されてゆく。
十一年前、梨花を初めて見つけた日の光景がありありと甦った。
石橋の上で死んだように倒れていた梨花。梨花の身につけていた血まみれの夜着。そのたもとに海棠の樹が薄紅色の花を盛りとつけていた―。
ちんと洟をかんでから、ジュソンは再び話し出す。
「関係ない? 本当にそう思うのですか? こちらの娘さんが実は、その兵曹判書、林大監さまのご息女だったとしても、あなたはそう言えますか」
「なっ」
ソルグクは言葉を失う。
「妹が、海棠が兵曹判書の娘だって? そんなことが―」
あるはずがないとは到底、口にできなかった。
ソルグクの記憶が巻き戻されてゆく。
十一年前、梨花を初めて見つけた日の光景がありありと甦った。
石橋の上で死んだように倒れていた梨花。梨花の身につけていた血まみれの夜着。そのたもとに海棠の樹が薄紅色の花を盛りとつけていた―。