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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第7章 哀しい現実
 それでも、執事はひとたび奥に引っ込み、南斗にソルグクの希望を伝えてくれた。南斗が姿を見せたのは、四半刻近く庭で待たされた末のことである。
「お待たせして申し訳ない」
 南斗は冬だというのに、額にうっすらと汗をかいていた。よほど急いでやって来たらしい。
「急な客人が来られ、どうにも外せなかったのです。父の古くからの知り合いだったもので」
 言い訳のように言い、南斗は丁重に謝罪した。
「今日は急な来客が多いようですね。もっとも、俺は、あんたにとっては端から望まない客だろうが」
 どうもこの男を前にすると、気が立ってしまうのは妹を案ずる兄としての気持ちだけでなく、梨花に恋する一人の男としての気持ちが強いせいなのかもしれなかった。
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