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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
二度と目ざめぬ眠りにつきたいと思う誘惑が梨花をいざない、差し招く。父や母、乳母の傍に行きたい。
少し離れた場所から、父上、母上、それにスンチョンが私を呼んでいる。
ここへおいで、私たちの許に来れば、もう二度と苦しむことも哀しむこともないから、と。
だが、兄の優しい声音がその誘惑を阻むのだ。
―小花、駄目だ、そっちへ行ってはならない。そなたは、まだ行ってはならないのだ。私の許に帰ってこい。
でも、兄上さま、私は疲れ果ててしまいました。どうか生きてご無事でいらっしゃるなら、私を迎えにきて下さい。
どれほど歩いただろう。息絶えた男たちを後にして、当てもなくさ迷った。自分が連れてこられた場所がどこなのかも判らなかった。ただ周囲には何も見当たらない荒れ地のような場所だったから、人気のない都も外れの場所だったのかもしれない。
少し離れた場所から、父上、母上、それにスンチョンが私を呼んでいる。
ここへおいで、私たちの許に来れば、もう二度と苦しむことも哀しむこともないから、と。
だが、兄の優しい声音がその誘惑を阻むのだ。
―小花、駄目だ、そっちへ行ってはならない。そなたは、まだ行ってはならないのだ。私の許に帰ってこい。
でも、兄上さま、私は疲れ果ててしまいました。どうか生きてご無事でいらっしゃるなら、私を迎えにきて下さい。
どれほど歩いただろう。息絶えた男たちを後にして、当てもなくさ迷った。自分が連れてこられた場所がどこなのかも判らなかった。ただ周囲には何も見当たらない荒れ地のような場所だったから、人気のない都も外れの場所だったのかもしれない。