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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第2章 転生
梨花がその噂を知ったのは、当然といえば当然といえた。場末の酒場で、或いは町の大通りに並んだ露店の店先で、その噂はまことしやかに人の口から口へと語られていったからだ。しまいには、町の高札に〝兵曹判書林成水の死について今後、一切語ることを許さじ、もし、この件について不穏な言動を見せた者は人心を乱したとして、見つけ次第捕らえて、厳罰に処する〟とまで書かれ、貼り出される始末となった。
その触れが国王の名で出た日、高札の前でじっと貼り紙に見入る一人の幼い少女がいた。
むろん、海棠と名を改めた梨花である。
―兄上、今、どこにいらっしゃるのですか?
梨花には、兄の亡骸がいまだに見つかっていないという事実が一縷の救いでもあり望みでもあった。梨花自身、骸が見つからぬということは、こうして名を変え市井の片隅で生きているということでもある。
その触れが国王の名で出た日、高札の前でじっと貼り紙に見入る一人の幼い少女がいた。
むろん、海棠と名を改めた梨花である。
―兄上、今、どこにいらっしゃるのですか?
梨花には、兄の亡骸がいまだに見つかっていないという事実が一縷の救いでもあり望みでもあった。梨花自身、骸が見つからぬということは、こうして名を変え市井の片隅で生きているということでもある。