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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
母も息を引き取る間際まで、梨花のことを気にかけていた。息も絶え絶えだというのに、ソルグクの手を握り、
―あの娘(こ )を守ってやれるのはお前だけよ。
と繰り返していたのだ。
叶うなら、自分が梨花を守るただ一人の男になりたい。しかし、それは梨花自身が決めることだし、梨花は自分を〝兄〟としてしか見てはいない。恐らく、これから先も梨花の瞳にソルグクが男として映ることはないだろう。
息子の眼から見ても、両親は梨花を我が子同然に慈しんで育てた。母は生命の最期まで、実の息子のソルグクよりも生さぬ仲の娘の行ゆく末を案じていたのだ。
いつのまにか、小さな梨花は崔家の人々にとってかけがえのない存在になっていた。いつもソルグクの後をついて歩いてくる梨花が時には鬱陶しく思えるときもあった。所詮、彼もまだ十歳の子どもに過ぎなかったのだ。
―あの娘(こ )を守ってやれるのはお前だけよ。
と繰り返していたのだ。
叶うなら、自分が梨花を守るただ一人の男になりたい。しかし、それは梨花自身が決めることだし、梨花は自分を〝兄〟としてしか見てはいない。恐らく、これから先も梨花の瞳にソルグクが男として映ることはないだろう。
息子の眼から見ても、両親は梨花を我が子同然に慈しんで育てた。母は生命の最期まで、実の息子のソルグクよりも生さぬ仲の娘の行ゆく末を案じていたのだ。
いつのまにか、小さな梨花は崔家の人々にとってかけがえのない存在になっていた。いつもソルグクの後をついて歩いてくる梨花が時には鬱陶しく思えるときもあった。所詮、彼もまだ十歳の子どもに過ぎなかったのだ。