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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
ソルグクの脳裡に、ふいに梨花が幼い日の出来事が甦った。
あれは確か梨花が八つくらいのときだったか。ある日の昼下がり、遊びに出た梨花は生まれてまもない野良の仔猫を連れ帰った。真っ黒で翡翠色の眼をした不思議な猫だった。
むろん、母は梨花にすぐ仔猫を元の場所に戻してくるように命じた。我が家では、仔猫を飼ってやるようなゆとりはなかった。しかし、素直なはずの梨花はいつになく頑なで、母の言葉を聞き入れず、やっと夕刻になってから仔猫を抱えて出ていった。
それで、すべてはおしまいだと誰もが信じて疑わなかった。だが、梨花は仔猫をどうしても棄てられず、ひそかに飼っていたのだ。近くの空き家に八百屋から貰った紙の箱を置き、仔猫を入れて時々、食べ物を与えていた。
その食べ物は、すべて梨花の三度の食事を自分は食べずに取っておいたものだった。最初に、そのことに気づいたのは母であった。
あれは確か梨花が八つくらいのときだったか。ある日の昼下がり、遊びに出た梨花は生まれてまもない野良の仔猫を連れ帰った。真っ黒で翡翠色の眼をした不思議な猫だった。
むろん、母は梨花にすぐ仔猫を元の場所に戻してくるように命じた。我が家では、仔猫を飼ってやるようなゆとりはなかった。しかし、素直なはずの梨花はいつになく頑なで、母の言葉を聞き入れず、やっと夕刻になってから仔猫を抱えて出ていった。
それで、すべてはおしまいだと誰もが信じて疑わなかった。だが、梨花は仔猫をどうしても棄てられず、ひそかに飼っていたのだ。近くの空き家に八百屋から貰った紙の箱を置き、仔猫を入れて時々、食べ物を与えていた。
その食べ物は、すべて梨花の三度の食事を自分は食べずに取っておいたものだった。最初に、そのことに気づいたのは母であった。