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インスタントコーヒー
第8章 疑惑
近づいていた気がしていた先生との距離が
ガチャン、の音で断絶されてしまった気がした。
先生との終わりを、予感させる音だった。
思えば先生のことを私は何も知らない。
彼女がいない、っていうのも
誰から聞いたかも覚えていない噂話。
誕生日も知らない。
好きな食べ物も知らない。
先生と近づいた、つもり、であったのだと
痛感する。
たかが『セフレ』が何を求めているのだろう。
あの人は多分彼女。
確証はないけど、先生と深い関係にある人だ。
なんとなく、そんな気がする。
あの人が彼女だとすれば
先生は最低な人。
私は関係クラッシャー。
昔から『浮気』だとか『不倫』だとかに
私は一番憎悪を抱いていた。
そういうことをしているかもしれない
自分や先生への憎悪が胸を圧迫する。
けれど以上に私の心臓を
ドクドクと撃ち鳴らすのは
自分が一番じゃない、悔しさだった。

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