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飼育✻販売のお仕事
第1章 逆説的冤罪
「旦那様……」
そのささめきは、さしずめ線のたゆんだピアノの音だった。
狼狽した喉の主の双眸が、ここでは唯一着衣している男を捕らえた。
鍛錬された肉体の、大柄な男だ。頬のたるみがそこそこの齢(よわい)を物語っているにせよ、働き盛りの男は、精気にみなぎっていた。
男の指が、女の脚と脚の間の縮毛をつまんだ。
「んっ」
女は大の字になり、粗末な台に繋がれていた。
薄い肉叢の覆った肩、そこからしなやかに伸びた腕、ふくよかに盛り上がった乳房を支える、エロティックな瓢箪型の壺を聯想する締まったウエストから広がる下半身──…一糸まとわぬ女体は、それだけで見る者に劣情をきたそうまでには見事だ。
男は伸びた恥丘を離した。その目はいかなる情緒も湛えず、不感症の視線が女を舐める。
「まだ……意地を張るのか。被害者どもも喜んでおろう。ほら、見ろ。お前を見ておる」
「っ、……」
女の目先の薄闇に、三方を巡った鉄格子がある。
壁伝いの独房から、薄布をつけた女達と、ブリーフ一枚の男達が、中央台を盗み見ていた。
男による感覚的干渉が、女の身体を這いにかかった。
「んっ、く……」
男の指が遊ぶはずみに、肉体は微動し、たわむ。
まもなく男のスーツケースから、黒い棒状の機器が出た。
哺乳類らは、中央の二人を見守るばかりだ。檻の中、裸体同然の姿で禁足されていては、抜け出すことも不可能だからだ。