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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡
第7章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚
──いっそ風邪なんて、一生治さなくていい…
「ッ……」
そこに布の擦れる音が加わって、腕に力を込められながら微かにそう聞こえた渚くんの余裕のない声は、アタシの胸をギュッと熱く狭くして堪らない感情で埋め尽くしていっぱいにした。
そのあと、なにも言えなくなったアタシに彼は
"……なんて、すげぇ理不尽だな"
と、自傷気味に笑いながらそう付け足したのだけれど…
最後に見た彼の切なげな笑顔に、ぎゅうぎゅうになっていた胸がとうとうパンクする。
するとそこから今日一日で渚くんがくれたたくさんの優しさと想いのカケラが次々と溢れ出してきて、
こぼしたくない…と、そう思ったアタシは咄嗟に伸ばした手で渚くんごとギュッと抱きしめ返していた。
「ッ…、千隼?」
そう呼ばれて顔をあげれば、少し戸惑うような渚くんがそこにいる。だけど…
「……いいよ、治んなくてもっ」
「………‼」
「渚くんがうつされてくれるなら…一生風邪でもいい…」
「ッ、バカ…」
胸元に顔を埋めながら思ったことを素直に口にすれば、驚きに弾かれていた彼の表情がふわりと緩む気配がして、降りてきた綿毛のようなキスが優しい声を運んでくる…。