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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡
第4章 バレンタインの事情♡その③…渚…
つーか、
ダメだろ、それ…
しかもなんだその顔…
「ッ……」
最悪だった症状がさらに悪化した。
耳を真っ赤にしながら、カッコいいのは見た目だけじゃないなどとたどたどしく説明する千隼を見下ろしたまま、深い溜め息が口をつく。
しかし、その溜息はけして悪いものではなかった。
むしろどこか心地の良いもので、まるで自然と力が抜けるようにしてオレは彼女の肩に顔を埋めた。
「お前…最悪なんだけど…」
「へ…」
首筋に顔を擦り寄せながら千隼の甘い香りを見つけると、そこに自分の香りを重ねていく。
「アタシ変なこと言っ…」
「……言ってねぇよ」
そして余計な言葉を唇で遮り、心地よい体温に身を委ねると自然に瞼が落ちてくる。
オレの視界は抵抗することなく光を遮った。
久しぶりの人肌と静寂が心地よかった。
「…………っ」
が、
手に入れかけた安息をどうしても邪魔したいらしいこの部屋の主。
ベッドと千隼に染み付いた葵の匂いがそのまま快眠には導いてくれないことを悟ったオレは、結局千隼を自分の部屋に拐って風呂に沈めた。
それからようやく…
「……くん、渚くんってば!!」
「………寒い」
「お腹すいた、喉乾いた、起きてよ」
「………返せ」
久々におちた深い眠りのドン底にいるオレの耳元で、クレープが食べたいだの、ホットミルクが飲みたいだのと呪いだか目覚めだかの呪文を唱え始めた千隼から剥がされかけたブランケットを取り返す。