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他人の妻、親友の夫
第6章 超える一線
窓から風が吹き混み、浴衣の隙間から撫でるように抜けていった。

「気持ちいい風……」

理依は目を細めて自然の心地よさに悦んでいた。
夏とはいえ緑の多いこの辺りは街中で感じるような不快な熱気がない。
エアコンはつけているがこうして風が吹けばそれだけで過ごせる気がした。

「ごめんなさい……」
「えっ……何が……」

突然謝られ、海晴が訊き返す。
彼女の真剣な眼差しに居抜かれ、惚けることは難しかった。
普段の頼りなく感じるほどおっとりした理依はそこに居なかった。

もう一度スワッピングしようと持ちかけられた時、海晴はもちろん断る気持ちが強かった。
しかし心の片隅には、理依に対する疚しい気持ちもあった。
淑やかな顔の裏に隠された、夜の彼女ともう一度逢いたいという願望。

「こんなことをお願いして……赦されないことだと分かってます……」

彼女の細い指が浴衣の太ももに乗せられる。
椅子に座った海晴の腰辺りに、床に座る理依の頭があった。
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