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他人の妻、親友の夫
第7章 献身的な虐戯
激しい絶頂に飲み込まれて力尽きた先輩の姿は羽化したばかりの蝶だった。
儚げで、それでいて力強く、美しくて神秘的。

『この人はどんな顔で奥さんのその姿を視てるんだろう……』

そう思いながらも志歩は秋彦の顔が視れなかった。

そしてその妖艶な理依の隣では夫が呆けた顔を浮かべて、こちらを視ていた。
今しがた人を刺し殺してきたような、魂の抜けた顔だった。

『ごめんね、海晴……こんなことさせて……先輩と私、どっちの方が気持ちよかった?』

絶対に答えを訊きたくない質問を胸の中で投げ掛ける。

志歩は乱れた浴衣を直すと独り、自室へと戻っていった。

部屋にはお風呂がない。
汚れた身体を清めたいが、旅館には家族風呂しかなかった。
今の時間は使えるか確認しようと古めかしい電話に手を伸ばす。

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