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他人の妻、親友の夫
第3章 嫉妬と憧憬
家に帰ったのは午後四時過ぎ。
マンションのドアを開けると志歩の靴が不揃いに転がっていた。
夜勤明けの彼女の疲労が無言で語られている。

海晴は労るようにその靴を揃えて並べた。

夢を追う自分も今年で二十代が終わる。
もはやダンサーとして、パフォーマーとして大成をすることは厳しい年齢だ。

焦る彼を妻は優しく見守ってくれていた。
『海晴なら、いつか成功するよ』
それが余計に海晴の重圧となる。

堅実に生きる妻の脚を引っ張り、『ヒモ』と呼ばれても仕方のない生き方。
情けなくて思わず歯を食い縛った。

「あれ、海晴……おかえり……」

トイレから寝惚けた志歩が出てくる。
深夜明けの仮眠の途中、尿意で目覚めていたようだった。

「ただいま……」

汗で濡れたウェアを詰めたバッグを起き、志歩の肩を抱く。
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