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さくらホテル2012号室
第10章 ほかに必要なことなど

「息を…合わせてごらん…」
先生が囁く。
互いの肌を重ね、性器を結合し、呼吸までもゆっくりとシンクロさせてゆく。目を閉じる。頭を空っぽにして、身も心も先生とひとつになってゆく。
互いの呼吸が、それぞれの胸に呼応してゆく。
言葉も交わさず。
ただ、先生と溶け合って。
この安心感。
この充足感。
わたしは今まで、こんな気持ちを味わったことがなかった。
性交とはずっと、愛情の交換のことだと思っていた。あるいは互いに協力しあって深い快楽を生むことか。
でも、先生との性交は、わたしにSEXの新しいステージを見せてくれた。
信じた誰かとひとつになることの、途方もない充足感だ。もしかしたら、世界はこれを愛と呼ぶのだろうか。
四十を過ぎたわたしにもわからない。
わからないが、そんなことは瑣末なことだ。
先生とひとつになる。
そのことを知ることはわたしの人生の中で途方もなく大きな事件なのだった。

