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WHITE TIGER
第1章 memory
━彼女と同棲━
それは…、思い出してはいけない事。
思い出したら最後、まるで薬物のように俺を浸食して行く。
それは、甘い甘い猛毒、麻薬のような思い出。
「━━━━━っ!!」
その場から逃げるように走り出した。
さっきまで女性社員に気づかれないように足音を立てないよう気をつけていたが
そんな事、もうどうでもいいかのように一気に駆け出した。
「ねぇ、今何か足音しなかった?」
「えー、気のせいじゃない?」
一目散に逃げ込んだのは男性用トイレ。
蛇口を捻り一気に水を出し、両手で掬った水を一気に顔に振りかけた。
━━━━バシャッ!
駄目だ。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
忘れろ、舞の事は。
舞。
田舎で一緒に育った俺の幼馴染み。
俺の初恋。
不便な田舎で育った俺はもっと上を目指したくて、あんな何もない田舎で一生を終えるのは嫌で思い切って上京した。
田舎に未練なんかないが唯一心残りだったのは幼馴染みの舞の事。
いつか、俺がもっと立派な大人になった時に迎えに行こうと思ってた。
けど、俺が上京して暫くして舞も上京。
理由は東京の大学に進みたいからだと。
勢い良く流れ出る水を見つめながら必死に舞の記憶を掻き消そうとしたが、一度甦った記憶はそう簡単には消えてくれない。