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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第3章
「へえ、クリスはクラシックのイメージが強いから、良いかもね。クラシックとジャズの、良いとこ取りで」
匠海もそう賛同すると、クリスは「そうかな……?」とまだ自信無さ気だったが、満更でも無さそうな顔をした。
ヴィヴィもクリスも、今年の5月で14歳。
来年からシニアの試合に出られる年齢になるため、少しでも今までの子供っぽいイメージを、払拭しておきたかった。
「ああ、クリスのイメージにぴったりだな。それに――」
そこまで言った父は、言葉を区切ると、得意そうな顔をする。
「それに?」
ヴィヴィが不思議そうに、先を促せば。
「ジャズとなると、我が家の長年の『英才教育』が役に立つ時が、やっと来たな!!」
自信満々に胸を反らす父に、兄弟達は顔を見合わせ、何とも言えない表情になる。
父はJAZZ好きが高じて、匠海にも双子にも、産まれる前からJAZZを聴かせていたのだ。
だから篠宮の子供は間違いなく、子守唄も遊び時間のBGMも、アート・ブレイキー や オスカー・ピーターソン、ジョン・コルトレーン だった。
特にヴィヴィは物心ついた頃から、普通の少女が興味を示す、ディズニーのおとぎ話の世界や、可愛いアイドルに目を向ける前に、
言わばオジサン(失礼――)達が奏でる渋い音楽に、耳を傾けていたことになる。
「お前達のSwingは、完璧だ!」
父は親指を立ててウィンクして見せたが、兄弟達は「それは、どうも……」と困ったように笑って見せるしかないのであった。