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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

「ヴィヴィ。ただいま」

「おかえりなさいっ」

 後姿でも判るほど、ヴィヴィの小さな身体からは「嬉しい」という感情がダダ漏れで。

 その背後、てくてく寄って行ったクリスにも、少年は同じく微笑んだ。

「クリスも、ただいま」

「……おかえり……なさい」

 双子の金の頭をナデナデした少年は、その背後に控えていた朝比奈に気付くと、

 礼儀正しく ぺこりとお辞儀を寄越してきた。

「初めまして。長男の匠海です。小学4年生(9歳)です。よろしくお願いします」

「ご丁寧に。朝比奈 純也と申します。これからお世話になります」

 微笑みを湛え もう一人の子息に挨拶しながらも、

 朝比奈は本日 何度目になるか分からぬ衝撃を覚えていた。


 双子の兄だという、黒髪の少年――匠海。

 その第一印象は「なんて綺麗な少年なのだろう」

 紺の詰襟に短パンの古風な制服、学生帽を纏った姿は まさに白皙の美少年。

 ピンと伸びた背筋と、紺のハイソックスを纏った長い脚には、

 若馬や若竹を連想させる しなやかさがあり。

 臆する事無く真っ直ぐ見上げてくる灰色の瞳は、理知的で自信に満ち溢れていた。


「おにいちゃまぁっ ただいまのハグ~~っ」

 いつもの日課なのか。

 短い両腕をめい一杯伸ばし、長男に だっこをねだる末妹。

「はいはい。ぎゅ~~っ」

 ヴィヴィのお尻の下に両腕を回した匠海が、そのまま持ち上げハグすれば。

「ぎゅ~~~っ」

 両脚が床から浮いてぶらんぶらんのヴィヴィは、堪らなく嬉しそうに兄に しがみ着いていた。

「ほら、クリスもぎゅ~~」

 弟も同様に抱っこしつつハグすれば、

 兄の肩口に顔を埋め、気持ち良さそうに目尻を緩めるクリスに気付いた。



 ああ、この子は無表情に見えるけれど、

 瞳を見ればちゃんと、色んな感情がありありと浮き出ているのか。



 この短時間の内で不思議なほど、篠宮家の子供達に惹かれたている自分がいた。

 まだ直接 会ってはいないが、こんなに素敵な子供達のご両親ならば、さぞ愉しい方達なのだろう。

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