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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第6章       

「では、ちゃんと寝ていて下さいね」

 おでこに冷ピタを貼ってくれた朝比奈は、主にそう言い聞かすと、食器を乗せたトレイを持って退室し。

 部屋には沈黙が下り、加湿器のシュンシュンという音だけがしていた。

「………………」

(……トイレ、行きたい……)

 そう言えば、朝比奈は抱きかかえてバスルームまで連れて行ってくれるだろうが、

 さすがに中学3年生のヴィヴィには、恥ずかしかった。

(しょうがない……、行きますか……)

 だるそうに上掛けをまくると、寒さとしんどさを我慢して、寝室を出た。

 なんとか寝室の隣のバスルームまで辿り着き、当初の目的を果たすと、

 ヴィヴィは「後は眠るだけ」と自分を奮い立たせて、寝室へと向かおうとした。

 パタン。

 どこからともなく聞こえた、扉の開閉音。

 頭痛に響かぬ様ゆっくり首を巡らせ、私室の扉を確認するが、誰も入退室した様子は無く。

 ヴィヴィは微かに首を傾げて向き直ると、寝室へと重い脚を踏み出した。

「へえ、ここが匠海の部屋?」

 またどこからともなく、聞き慣れない女性の声が微かに聞こえ。

(……匠海……? お兄ちゃんの、お部屋……?)

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