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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

はあ……はあ……。
家までの道のりをどうやって戻っていたのか――僕はそれを憶えてはいない。
只――
『ホント……なんなのよ、一体……!?』
部屋を無残に汚された時の、彼女の――失望に歪められた表情は、映像として記憶の最中に収められていた――。
「……」
よろよろとしておぼつかない足取りで、とりあえず辿り着いていたのは、家の近くの路地。その見慣れた風景にほんの少し安堵を覚えると、僕は自分の姿を気にした。
衣服の所々が酷く汚れているのがわかって、あの部屋を逃げ出した後、幾度となく転びその度に嘔吐を繰り返していたことを――否応なく、思い知った。
なぜ、僕はこんなに惨めなのだろう? ――と、思う。
今日、朝起きた時まで――否、バイトをしてる時だって、普通の男だった筈だ。なのに――
ああ……そうかよ……くそっ……!
僕にはあのような経験があるから、どうもそれを消すことは――忘れることも無理らしく。もう全てを吐き出して何もない胃が、更に強まった嫌悪感に反応しぴくぴくと痙攣しているかのようだ。
だったら、男としての僕は、この先を――どうやって生きればいいのかって。そんな大きな不安が、やがて夜の闇に混ざりあっていった――。

