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エブリデイ
第3章 意識した瞬間から

「ん、ちゅっ……ちょっと、痛いよ……肩」


 その声を聞いて――


「え、あっ――」


 僕は慌てて、両手を放す。いつの間にか寺井の肩を、強く掴みすぎていたみたいだ。


「ご、ごめん……」


「いいけど、別に。それよか――さ」


 寺井はそう言いながら、僕の顔を意味ありげに覗き込む。


「なに、か――変?」


「うん、変。だって、顔が異常なくらい――真っ赤だし」


 そう言われ思わず両手で自分の頬を触れると、まるでひと肌じゃないくらいカアッと熱い。


「ふ、ふ、ふ」


 からかうようなその笑みに、ちょっとムッとして――


「そ、そっちだって、少し紅くなってるし」


 僕はムキになった子供みたく、寺井の顔を指差した。

 そしたら――


「嘘だ」


「嘘じゃないよ」


「キスして赤面なんて、私のキャラじゃないし」


「知らないよ、キャラとか。ほら、自分で鏡見て確かめてみなよ」


「嫌だ」


「嫌とか、言われても……」


 キスで得たムードを台無しにするように、取り留めもなく言い合っている、その内に――。


 あれ? もしかして、本気で照れてるの――かな?


 僕はそう思った途端――急に寺井のことが、可愛らしく思えた。


 けれど、その直後――やはり、寺井夏美は変な女だって、僕は思い知らせれるのだった。

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