Even if
もう君の中には俺の感触は残っていないのだろうか?
あの男の方が俺のよりいいのだろうか?
君はあのときのことは「酔っていたの、ちょっとした気の迷い、忘れて、今まで通り友達でいましょ」と笑って言ったきり、二度と口にすることはなかった。
でも俺は、あの日の夜のことは忘れられない。
あんなに情熱的に愛し合ったのに。
唇が腫れ上がるほどキスをし合い、ふやけるほどお互いのものを口に含み、君は何度の俺の名を呼び、そして最後に「今日は大丈夫だから、ヒロト君のが中に、中に欲しい!」と叫んだ。
俺は君が望む通り君の中で果てた。
そして同時に君も絶頂に達した。
あんなにも身体の相性が人は君が初めてだった。
君もそうだと思っていた。
でもあれ以来、講義でも俺から離れて座るようになったし、サークルの飲み会でも俺の近くには来ようとしなくなった。
何があったというのだろう?
そしてあの日から一ヶ月後、君の突然の退学と婚約の発表。
相手はどこかの会社の社長の息子だとの噂だった。
君の誰ともなく、さりげなく見せる薬指の大きなダイヤの指輪に、顔も知らない男と抱き合う君の姿が思い浮かんだ。
その男は俺より身体の相性がいいのだろうか?
いや、そんなはずはない。
初めてのセックスなのに、中に出させる相手なんてそうはいないはずだ。
あれは俺とだからだ。
俺と君は本当に愛し合ったんだ。
あれ以上の愛の形なんて存在しない。
君は多分、何かの理由で愛よりお金を選んだんだ。
でも、いいかい、それは間違っている。
そんな関係は長続きしない。
心底愛し合った相手と結婚するのが本当の幸せなんだ。
その相手は俺なんだ。
今君は薬で眠ってるけど、目が覚めれば分かる。
ほら、これが俺なんだよ。
君があのとき懇願した俺のもの。
俺とのことを思い出せば、もうあいつのことなど取るに足らなくなる。
ほら、あのときのこと、思い出すだろ?
もう一度してあげるよ。
キスしながらいくよ。
これが君の幸せだ。
俺も同じだ。
いいかい?
いくよ。
いく。
いくっ!
くうぅっ……。
目が覚めたら、もう一度してあげるね。
大丈夫。
安心して。
君は誤解してるんだ。
本当の愛の意味を。
これが本当の愛だ。
今度、もう君が忘れないように、君からあふれ出る俺の愛の証を撮っておくよ。
君の婚約者も分かってくれるはずだ。
完
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蒼井シリウスさんの日記
官能ベリーショートショート その50
[作成日] 2021-03-04 21:43:05