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蒼井シリウスさんの日記

官能ベリーショートショート その52
[作成日] 2021-10-04 23:29:52
彼の場所

私の脇の下から回された彼の腕は、身体が上に逃げらないよう私の両肩を抱きしめた。
その本望を遂げようと、彼のものが、私の深部を力強く突く度に、私も促されるように声を高く上げ、頂へ駆け上がる助走に入っていく。
彼の首に手を回す。
両膝を深く折り曲げ、外側に大きく開く。
二人とも今の自分たちの立場を忘れて昔のように、自分の為、相手の為に、自分の身体を懸命に動かしていた。
ふと 夫のことが思い出された。
きっと今頃夫は、出張でいない私に変わって娘の為に娘の大好物のオムレツを作っているだろう。
ケチャップで絵を書きながら。
そして、妻であり母親である自分は今、夫の知らない男の熱いものを自ら自分の中に収めて、夫にもここ数年は許していない、男の本能の目的を直に受け止めようとしていた。
彼のものが突き上げと同時に更に腰を押しつけ左右に振り、私の奥の女を開かせると、私は顔を仰け反らせ彼の肩口にしがみつきながら、
夫とは違う名前を叫んだ。
「来て! お願い! そのままっ!」
今まで彼の全長を使ったストロークが、今度は私の中にほぼ大半を埋め込んだままの動きに変わった。
奥に密着させながらえぐり続ける……。
あの頃と変わらない彼のやり方……。
彼のそれは間近に来ているのがわかる。
彼の硬度が増しているから……。
私は突き上げに合わせて腰を押しつけた。
私の身体もあの頃のように無意識に動いていた。
そう、もうこれから何も考えなくても、お互いが最上の瞬間を遂げられるの……昔のように。
彼が私の名を呼ぶ。
「……いくぞ……」
「うん、来てっ!」
私も彼の名を呼ぶ。
小刻みに何度か突き上げた直後だった。
「くっ、ううっっ!」
私の耳に、彼のくぐもった声がかかった。 
彼のものが一瞬更に大きく硬くなった。
私はその瞬間に合わせて、脚を彼の腰に絡ませ引き寄せた。
私の奥深くで彼のものが力強く脈打ち始める。
今まであった彼の熱より、更に熱いものが私の中に広がるのを感じた時、私は数年来味わったことない頂に達した。
それは夫では届かなかった私の場所。
私にはまだあったんだ……彼の場所……。
彼にしがみつく。
その場所で彼の脈動は長く続いた。
私を抱きしめている力が弱まる。
私の腕も脚も彼から離れた。
こんなにも深くつながった彼の場所からでも、収まり切れない熱いものが溢れ、伝い流れ出てきた。

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