四十分の短編アニメ映画。
冒頭、実写と見紛うばかりの雨の風景描写。
全編、雨の景色で埋め尽くされている。
でも、陰鬱さは微塵もない。
逆にさわやかさを感じる。
雨の日の午前中は授業をさぼり、公園の東屋で、靴のデッサンに勤しむことにしている男子高校生の主人公。
ある日、先客がいた。
ビール片手にチョコレートを食べるOL風の若い女性。
明らかに彼女も会社をさぼっているように見えた。
どこかで会ったような気がし、問いかける少年。
彼女は「ない」というが、彼女が少年の制服に目を留めると「ひょっとしたら、あるかも」と言い直す。
別の雨の日、また東屋に彼女がいた。
さぼり仲間同士、打ち解け始める。
彼女は去り際、少年に短歌を投げかける。
「なるかみの、光とよみてさしくもり、雨さえ降れや、君はとどらむ」
何もセンセーショナルな展開もなく、高校生とOLの淡い恋への発展か、と思わせてストーリーが進む。
でも、ここまで伏線の数々で、終わり近くの伏線の回収はセンセーショナル。
2013年の作品。
前評判が良かったので遅ればせながら観た次第。
これ、小説で書いたら、短編なのに情景描写の量はハンパないと思う(笑)
それくらい、景色の描写が多い。
「そこ必要?」と思うくらい(笑)
双方の“心の声”のナレーションがところどころ入る。
主人公は少年だが、彼女視点サイドもある。
そのときは、彼女の素性を秘密にしながら、彼女の“その時の心情”だけをしゃべらせている。
ちょっとずるい。
逆に“彼女サイド”なくても良かったのでは?
彼女の想いは、しぐさ、セリフ、行動で量らせ、最後のクライマックスに、あの彼女のセリフにたどり着かせた方が……。
そして、彼女が自分の想いを告げた瞬間「ああ、そうだったのか」と……。
そこで、すかさず大江千里の『Rain』が流れ出す……。
「おお、ここでRainか……」
と、ここでおじさん世代はちょっと感傷にふける(笑)
古い歌だが、好きな曲だ。
ただ今回は秦基博が歌っている。
この曲を選曲するところなんか、監督の“昭和感”バリバリだ。
舞台はスマホ時代だけど、主人公の男のさわやかさも、昭和のおじさん世代にしか理解できない。
今の若い世代に見せたら「こんな男子高校生いねえよ」と言われるだろう。
舞台が昭和でも違和感はなかったのでは? と、おじさんは思う。
完
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蒼井シリウスさんの日記
映画レビュー『言の葉の庭』
[作成日] 2015-04-13 12:11:28