小説家であったり、芸術家であったり、何か自分の中にあるものを外に表現したいと思う人には、その表現の仕方にパターンがある。
ここで官能小説を書いていると、「ああ、またこの表現の仕方になってしまったな……」ということに出くわすことが多い。
つまりその表現の仕方が、その人の表現したいことなのである。
性癖と同じで、そのパターンを表現するとこにある種の快感を得るからだろう。
あるアニメのワンシーンがある。
ドロドロに崩れる巨体を持ち上げ口を開く怪物。
不揃いの牙が外側に倒れ、喉の奥から円筒系の機械が現れる。
その先端が徐々に光りが集まり始め、次の瞬間そこから一筋の光線が放たれる。
それは光の帯となり、その光の先端は、迫りくる巨大な巻き貝のような怪物の群をなぎ払う。
次々と爆発する怪物たち。
映画『風の谷のナウシカ』のクライマックスの場面だ。
実はこのシーンの原画を描いたのが、今回の『シン・ゴジラ』の総監督を務めた庵野秀明だ。
知っての通り映画『ヱヴァンゲリオン』シリーズの総監督でもある。
久しぶりに映画館に入った。
最後に入ったのは子供がまだ小さかった頃の『ポケモン』シリーズだと記憶しているから5年以上は経っている。
映画はレンタルDVDで充分だ、と思っていた私を映画館に向かわせたのは、監督が庵野氏であること、予告編の映像に惹かれたからだ。
観た結果。
予想以上の出来だった。
ここでは多くは語らない。
私と同じように先入観なしで観て驚いて欲しいからだ。
これは映画館で観て良かったと思った。
これは是非ともみんなに薦めなければと思った。
そして観た人と語り合いたいと思った(笑)
そう、表現者、庵野氏のパターンを。
予告編の映像。
暗闇の中でうつむくゴジラの顔のアップ。
開かれた口の奥に徐々に満ちてくる青白い光。
そこで映像は終わる。
多分、庵野氏はこの後の映像を観てもらいたかったのだと思う。
そして私は観た。
まさに庵野氏は、あの後の映像を表現したいがために『ゴジラ』を作ったのだ、そう確信した。
もしくはそのために『ゴジラ』を利用したのだ。
口から何かを吐いて相手を攻撃する巨大生物はそうそういないからだ(笑)
歴代の『ゴジラ』ファンには賛否両論あるだろうが、多分『エヴァ』ファンには受け入れられる作品だと思う。
重ねて言う。
是非とも映画館で観て欲しい作品だ。
完
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蒼井シリウスさんの日記
映画レビュー『シン・ゴジラ』
[作成日] 2016-08-12 11:55:07