そろそろ夏を思わせる陽気になってきました。
夏というと思い出す曲があります。
それは山下達郎の『夏への扉』です。
私の好きな曲のひとつです。
でも、この歌詞一読しての意味が分かる方は、いるでしょうか?
(ここで歌詞を書きたいのですが、個人のブログ等であっても歌詞を載せる場合は『JASRAC』への許諾手続きが必要になるので書けません。お手数ですがご自分で検索してください)
でも、この歌詞一読しての意味が分かる方はいるでしょうか?
“ピート”って誰?
“リッキィ・ティッキイ・ティヴィー”って何?
それは、1956年に書かれた近未来SF小説の『夏への扉』 (ハヤカワ文庫SF)を読まないとわからないのです。
仲間と恋人に裏切られた主人公が“冷凍睡眠装置”に入れられ“30年後の未来”で目覚める。
そして今度は過去を変えるため“30年後の現在”で見つけた“タイムマシン”で過去に戻り、自分と姪っ子を助け“30年後の未来”で会う約束して二人で冷凍睡眠に入ろうとする。果たして二人に幸福な“未来”が訪れるのだろうか?
という、物語を基に、この曲が作られたのです。
その姪っ子の名が“リッキィ・ティッキイ・ティヴィー”で、主人公の愛猫の名が“ピート”です。
そうわかると、なんとなく歌詞の意味も理解できます。
でももう一つ不明な点が……なぜこの小説の題名が『夏への扉』なのか?
それは本の裏表紙に書いています。
『猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、明るく楽しい夏へ通じていると信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ……』
実はこれ、読んでみて『夏』を思わせるテーマではないし、記述もこれだけです。
ではなぜ作者はこの題名にしたか?
それは、多分、思うに、作者は猫の目から見た“夏”と、主人公から見た“幸福な未来”とを重ね合わせたのではないでしょうか?
『夏の扉』を探し続けることをあきらめないピートと『幸福な未来』をあきらめない主人公。
これは“夏に読む”というより“落ち込んだ時に読む”本ですね。
そして“読んで”から“聴く”とより楽しめます。
お試しあれ。
完
作者ページ
蒼井シリウスさんの日記
『夏への扉』
[作成日] 2017-06-21 09:28:44