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blueなrubber soul side A4
side A4 Trioで嘘をつく犬
(think for yourself)

取り立てて、ここで具体的に話すほどでもない、ちょっとしたイヤな事があって、男は、普段行きつけもしないバーへ、フラリと立ち寄った。
カウンター席について浮かない顔で飲んでいると、店の隅にいた女三人組に声をかけられた。どうやらカードゲームをするのに、もう一人必要らしい。

申し訳なさそうに、初めに彼に声を掛けてきた女が、遠慮がちにゲームのルールについて説明しはじめた傍から、それよりやや声高な調子で、他の一人が話に割り込んできた。“まあ、実際にやっていけば解ってくるわよ”
“そうそう、何もかも全部解ってしまってからだと、却ってつまんなくなるかもよ”
最後の一人が、締めくくりの様に相槌を打つと、三人いっぺんに話を終えた。幾分、それぞれに声の調子は違うものの、三人とも似たり寄ったりの声音で一斉に話しはじめては、揃って静まり返る。こんな具合だから、誰が何を話しているのかさえ、男には聞き取れない事がままあり、相変わらず粘り強く、静かにゲームを説明する声に、彼の手持ちのカードにまでお節介をしながら度々発せられる甲高い声が混じり、実のところ、かなりゲームが進んだ段階になっても、男はルールを把握出来ないでいる。しかしながら、当の女三人は、一人が彼のカードにちょっかいを出しつつ、それなりに盛り上がりもし、さほど支障も無いらしい。

語るほどでもない、ちょっとしたイヤな事がある程度の自分なら、このまま流れに任せて、ゲームの人数の穴埋めをするのも、居心地としては悪くないと、男はそんな風に思い始めてもいた。そして、何の気なしに一旦加わってしまったからには、そう簡単に抜けられそうにもない事を、ゲームが進むにつれ高まってゆく彼女達の狂騒ぶりを見るにつけ、ひしひしと感じつつある。
その、彼の心境のわずかな変化を察するかのように、女の一人が、誰に言うでもなく、つぶやいた。
“そうそう、だいぶ解ってきたみたいだわね”
[作成日]2020-05-12
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