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NEW 霧山純生さんの作者ニュース

実話怪談?に官能をプラス
 その日は仕事で車に乗っていた。ドライバーと私ともう一人の三人だ。南北に長く伸びている大通りを走り、信号待ちで止まった。

 後部座席の右側に乗っていた私はなんとなく外を見た。するとそこに異様な雰囲気のマンションがあった。

 雨の染みと埃や排気ガスで黒く汚れた外壁。一階はテナントスペースだが大半は黒ずんだ板で塞がれている。入居しているのは二つだけ。不動産屋らしき店ともうひとつはなんだかわからない。美容室のような雰囲気だった。どちらもひと気は感じられない。

 二階から上は居住区画のようだ。こちら側に共用廊下がある。赤錆びた手すりと、くすんだ色味のドアが並んでいる。見上げたら五階まで共用廊下があった。屋上までけっこうな高さがある。

 陰鬱で暗い。それが印象だった。

 こんな朽ちかけた廃墟めいたマンションに住んでいる人はいるのだろうか。ドアの向こうはどうなっているのだろうと思った。と同時に、変な気がした。

 その大通りは賑わいのある商店街で、大型レストランやスーパーマーケットに大型家電店、複数のメーカーの自動車のディーラー、最近に建った小洒落たマンションもいくつかある。そんな環境に、こんな廃墟めいたマンションはまるで合っていない。

 さらにその道は今まで何度も通ったことがあるが、こんなマンションはそれまで見た記憶がなかった。

 信号が変わって車が動き出した。それっきりそのマンションのことは忘れていたのだが。

 数日経ってから、なんとなくあのマンションの場所を特定したくなった。仕事上の関連も少しはある。記憶を頼りにGoogle mapのストリートビューで探してみたが見つからない。おかしいと思い、その大通り全部を探してみた。でもそんな廃墟マンションなど無かった。

 いったいどこで見たのか?

 ハッと気がついた。あの日、あのマンションを見た日の車のルートは、あの大通りを通るはずがない。一緒に乗っていた同僚にも確認した。残念ながらその同僚はどのルートを通ったのか覚えていなかったが、あの道を通過しなかったのは確かだった。

 自分はどこで見たのか?
 
 ただの記憶違いにしてはハッキリ覚えている。そのマンションの絵を描けるほどに。

 あるはずなのに見つからない。いったいなぜ?



 …という実体験を元にこの小説を書きました。どうぞお愉しみください。
[作成日]2023-07-06
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完結
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