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日本の中世に似た遥彼方の星の物語。
大小数百に分裂した国が生き残りを賭けて争う。
ここ白砂(しらさ)半島も欲望の渦に呑まれんとしていた…。

水軍の女頭領・香羅(から)。
朱塗りの皮鎧に均整の取れた華奢な体を包み、十九歳で宇輪(うわ)水軍を指揮する。一年前の初陣より海戦では負け知らず。父の仇敵・茂里(もり)水軍の縄張りを半分近く奪い取ったところである。
小麦色の健康的な肌。すらりと伸びたしなやかな四肢。快活で勝ち気な表情が美形の顔立ちを際立たせる。香羅が戦船を操る時、味方の士気は天を衝き、敵は勝利を失う。ついたあだ名は『蛟姫』。
同時に「蛟凌辱する者誰ぞ」…その美貌は男たちの黒い期待と欲望をも喚起した。

香羅の親友、水軍参謀・枇杷（びわ）。
亡国難民の娘。出生後“傭兵屋”と呼ばれるシンジケートに買い取られ、諜報、暗殺、兵法を叩き込まれていく。
ある任務の最中、海に落ちた枇杷は宇輪水軍に救助され、香羅と出会う。物静かな枇杷だが、生い立ちからか、強者が弱者をいたぶることを許さない。そんな枇杷と香羅。友情はすぐに芽生えた。　　
二十歳の体は悪を葬る兵器。白い首筋、艶めかしいくびれ、匂い立つ女の姿態を隠し、しなやかに男を逝かせる。情熱を抱いた冷静な瞳が、今、欲望と対峙する。

宇輪水軍を支える貿易商・桔耶（きや）。
二十五歳。夫を探す、魅惑の女商人。若妻らしい豊かな体を鮮やかな大陸衣装で包み、強欲を挫く義侠の女性。
貿易商を営んでいた夫が海賊に襲われ行方知れずになったのは三年前。以降、奉公人を束ね商売を続けている。彼女の商才は“救済復興”。荒れ果てた貧しき国、侵略を受ける都市を救け、復興の後に財を得る。今では宇輪水軍の御用達の貿易商でもある。
しかし、力無き者の女神故、権力者には苦々しい。彼らは、彼女を捕らえ、その衣服を引き裂き、豊満な肉体を蹂躙し、夫を想う心を奪い取らんと画策するが…。