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魔法使いの誤算
ID 16169
恋愛・純愛
- (PV) 28,422
- (しおり) 60
- 456拍手
最終更新日 2018-12-12 02:26
概要
あなたの恋人は、本当にあなたが愛している人ですか?
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作品説明
香りは一番記憶に残ると、何かで聞いたことがある。
百貨店の香水を試しに嗅がせてもらった時、私の脳裏に知らない男が現れた。
その男の顔は靄(もや)がかかった様にボヤケてしまいよく分からなかったが、なぜか瞳の色だけはハッキリと見えた。
茶色と緑色が混ざったような神秘的な瞳は、ロシアンブルーの瞳に似ていてとても美しかった。
胸の中がざわつき、小さな虫が背中を這いまわるような気持ち悪い感覚に襲われ顔を歪めると、恋人の京平が心配そうに私の顔を覗き込む。
「どうした?具合でも悪い?」
優しく背中を擦りながら心配する京平に私は脳裏に現れた男の話しをした。
「この香水の香りを嗅いだ瞬間、知らない人が頭に浮かんできて何だか気味悪くなったの」
「知らない人?特徴は?」
「ロシアンブルーみたいな瞳をしていたわ」
男の特徴を聞いた瞬間背中を擦っていた京平の手が止まり、幽霊でも見ているような目で私を見ていた。
明らかに様子がおかしい京平に『心当たりでもあるの?』と聞いたが、首を左右に振りいつも通りの優しい表情に戻していた。
香りは一番記憶に残ると言われている。
俺は夕日が嗅いだ香水の瓶を手に取った。
50mlで11500円もする香水。
「こちらの香水には薔薇の花蕊を使用していましてとてもセクシーな香りに仕上がっています。花蕊とはーーー」
「雌蕊と雄蕊の事ですよね」
花蕊の説明をしようとしていた店員の言葉を遮りそう言うと、『よくご存知ですね』なんて呑気な愛想笑いを俺に向けてきた。
俺は花蕊の香りを含むこの香水を見つめながら呟いた。
「殺しておけば良かった」
夕日は忘れている。
この臭いがーーー"かつて愛していた"男の臭いだと。
作品公開日 2018-11-20
ランキング
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4217位 (過去最高 173位) |
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カテゴリ |
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