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　二十七歳を迎えたその夜に死を決意した学（まなぶ）は、最期に女を知ってからこの世を去ろうと都内某所の立ちんぼエリアでとても〝綺麗〟なひとりの女を買った。
　その女性、啓子（けいこ）も同じく二十七歳を迎えたその夜に死を決意し、思うところあって立ちんぼエリアへ立ったのだという。
　こんな、清廉潔白さと清純可憐さを併せ持った“綺麗”な女がどうして立ちんぼなど…と疑問に思いながらも学は、啓子にリードされるがままに事に及んだ。ものの、
「うぐぐっ！うっ…いいから…来て…！」
なんと啓子もこの晩、初めて男を知る身だったのだ。

　互いが生まれて初めての相手となった学と啓子は身体だけではなく心までも開かせ合い、遠慮なく本音をぶつけ合う快楽にも生まれて初めて溺れた。
　宗教狂いの家族に叩き込まれた正義と道徳に殉じて生きてきた学と、過干渉な教員の両親に刷り込まれた正義と道徳を盲信して生きてきた啓子にとって、それは知ったばかりのセックスに勝るとも劣らぬ堕落だった。

　そんなふたりは翌朝、ホテルで別れることなく共に歩き出すとどちらともなくスマホをドブ川に沈め、
「ところで、死ぬのしばらくやめてみません？」
どちらともなくそう言い合うと、この世から逃亡すべく南行きの電車に乗り込んだ───。

　そんな、ロードムービー的な官能作品です。
　どうぞ、お楽しみください！