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『木漏れ日を、すくう手』は、恋をまだ知らなかった高校二年生の葵が、保健室の女性教師・椎名先生に心を惹かれていく、やわらかな百合恋愛小説です。季節は春から初夏へ――日常の中にほんの少し混ざり込む特別な感情。それは憧れのようで、でもただの憧れではない。触れられた指先、ふとした言葉、差し出した手作りのお菓子。どれもが葵の中に静かに波紋を広げていきます。

椎名先生は、生徒たちに人気のある面倒見の良い保健の先生。過去に恋愛経験はあるものの、今は独り。そんな彼女に、言葉ではうまく表せない想いを抱く葵は、日記に本音を綴り、そっと行動を起こし始めます。

この物語では、ドラマチックな展開や激しい感情表現ではなく、“気づき”と“揺らぎ”を丁寧に描いています。感情の移ろいを、木漏れ日のようにやさしく描写し、読後にあたたかい余韻を残すことを大切にしています。

百合というジャンルでありながら、普遍的な「誰かを好きになることの美しさ」に寄り添った、睡眠前にぴったりの一作です。