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第12章 挫折☆翠川未来の事情

私は星夜をあっさりと捨てて、付き合っていた演奏家の彼氏とﾌﾗﾝｽへ飛び立った。

もちろん、向こうでの生活費も移動費も全部、榊原先生が出してくれた。

私達は、明るい未来を想像して期待を胸にﾌﾗﾝｽへ行った。

未来は明るいはずだった。

それなのに、ﾌﾗﾝｽで待っていた現実は、私に人生で初めての挫折を突き付けた。

日本ではﾋﾟｱﾆｽﾄとしても、それなりに評価されていた。

彼も演奏家として活躍していたのに、ﾌﾗﾝｽでは2人共全く相手にしてもらえなかったのだ。

自分には自信があった。

昔からﾁﾔﾎﾔされていたから、ずっと順風満帆な人生だった。

私がやってきた音楽を全面的に批判された。

そんな事は初めてだったから、正直よくわからなくなってしまった。

初めて味わった挫折。

それは想像以上に私達を苦しめていった。

どうにもならず、藁にもすがる想いで、榊原先生に連絡をした。

私の相談を聞いた榊原先生の冷たい言葉。

｢私はお金の援助はした。あとは自分次第だ。君に実力がない事を私は、どうする事もできないだろ。｣

そう言って電話は切れた。