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父と娘の近親相姦日記 April fool archive
第1章 世界の終わり。始まりの二人。
[10月25日] 風景:小学校
桜井家の3人がようやく小学校にたどり着いた時点で、シェルターはほとんど満員となっていた。高畑家の面々とはいつの間にかはぐれて、もはや彼らがどこにいるかはわからない。
「二人!あと二人だ!ここに乗れるのは!」
シェルターの中から声が飛ぶ。
「ふ、二人って…」
華が絶望的な表情を見せたところで、
「華!」
と声がかかった。
「え!?リョウタ!?なんでここに…」
「昨日俺だけ八兆寺市からこっちに来たんだ…そしたらこんなことに」
「そ、そうなんだ…運が、悪かったね。」
「いや、あっちも同じらしい…華…君には会いたかった。一度きちんとあの時のことを…」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」
華はそう言って一瞬苛立ちを見せたが、次の瞬間、一つの決意にたどり着いた。
「早くしろ!誰が乗るんだ!もう時間がないぞ!」
「この二人が乗ります!リョウタ!柚子をお願いっ!」
そういって華はリョウタと柚子をまとめてシェルターのほうへ押しやった。
「えっ!お姉ちゃんっ!やだよっ!」
「うるさいっ!最後くらい言うこときけっ!」
華は二人を強引にシェルターに押し込むと
「…いいよね。お父さん。」
と、父のほうに顔を向けた。無言で深く頷いた父を見届けると、
「お姉ちゃーーんっ!」
「華ーっ」
と叫ぶ二人に、あとでねっ!とだけ告げて扉を閉めた。
ガチリ
とロックのかかる音がして、シェルターはグイーと地中へ潜っていく。
このシェルターは、そのまま鉾浜市という船の外の放出され、地上を目指すのである。
そのシェルターが見えなくなると、そこには華と父の二人だけが残された。ゴゴゴという地鳴り、ビュービューバタバタという風の音に、止まない避難勧告の放送が重なる。
「二人だけに、なっちゃったね。」
「よかったのか?」
「柚子を見捨てるわけにもいかないし、お父さんとお別れするのはもっとやだ。だからこれでいいのよ…」
「ほかの避難場所に行こう…」
「もう無理だよ。10km近く先だよ…それより…、ね。神社いこう。ずっと昔に行った神社。ここからすぐだから。」
娘が言ったのは、そこから少し小高い丘を登ったところの頂上にある小さな神社だった。