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桃色フラストレーション
第20章 台風の目 - 1
目が覚めると高崎くんはまだぐっすり眠っていた。よかった、本当に眠れたんだ……と思いながら、起こさないようにベッドから出て、シャワーを浴びた。身支度をして部屋に戻ると、高崎くんがベッドに腰掛けてミネラルウォーターを飲んでいた。
「あ、おはよう。ぐっすり眠れてたみたいだね」
「ん……。おかげさまで。……シャワー、浴びたんだ?」
「うん。高崎くんも浴びる?」
「そうだな……、朝食って、ついてたっけ?なんか……腹減った」
「えぇと、ついてるよ。ビュッフェだって。食べに行こ!」
朝食は9時まで、今時計の針は8時を回っている。
「じゃあ俺その後でシャワー浴びるわ」
「チェックアウト何時かな」
「いや……、俺、今夜もここ泊まるわ。ほら、外まだこんな天気だし、ここなんか落ち着くし」
窓の外は昨夜よりも酷い暴風雨、というか、窓に雨が叩きつけてくる音が激しいぐらい。私も帰ろうにもこれじゃあきっとまだ電車が動いていない。
「うん、じゃあもう一泊ね」
フロントに電話をすると、スムーズにこのままこの部屋に泊まれることになった。

朝食ビュッフェは美味しくて、私はたくさん食べた。そして高崎くんもたくさん食べた。
「久しぶりだよこんなに食うの」
「痩せたもんね~」
「そうだな。ほんとろくに眠れずろくに食えず……だったからさ……、それが解消されただけでも有難いよ。桃井のおかげだ」
昨夜会ってから初めて見せた笑顔に、こちらもホッとする。食後のコーヒーまでゆっくりいただいてから部屋に戻った。
「んじゃ俺シャワー浴びるわ。自分が居酒屋くせぇ!」
「わかる~だから私もさっき浴びたんだよ」
彼がシャワーを浴びている間、テレビの台風情報を見ていると、かなりの路線がアウトになっていて、被害もあちこちで出ていることを知り、本当にこのホテルが空いていてよかったなと思った。
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