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桃色フラストレーション
第23章 意外な電話
――千代へ
香港駐在が長引くことになった。
話したいことがいろいろあり過ぎて、手紙や電話じゃ無理だ。
お願いだから会いに来てくれ。一泊だけでもいい。
会って話すまで諦めないって決めた。


手紙の内容は、これだけ。同封されていたのは、オープンチケットの航空券。迷いはなかった。私もちゃんと会って話そう、逃げちゃだめだ、会って話すまで勝手に諦めちゃいけないんだ……!と思えた。ちょうど来週ある三連休に、香港へ飛ぶことを決意した。

ワタリさんから荷物到着確認の電話が入った。
「中身を確認していただけましたでしょうか」
「はい、ありがとうございます。来週の三連休にこちらのチケットを使わせていただこうと思いますので、澤田さんにお伝えください」
「そうですか……!きっとお喜びになると思います。では空港へのお迎えとホテルの手配をさせていただきますので、便名が決まりましたら私宛にお知らせください」
秘書みたいなものなんだろうか、ワタリさんはとってもスマートで、紳士的な印象の男性だ。こんな部下がいる光って、もしかして結構えらい人なの……?あんまり考えたことなかった……。
「実は澤田は現在支社長に就任されまして、とても多忙に過ごしております。そのためこうしてわたくしが連絡役をさせていただいておりますが、問題ありませんでしょうか?」
「あ、はい……。え、支社長……なんですか?」
「はい。とても人望があり優秀な方なので……、わたくしどもも常々助けていただいております。くれぐれも桃井さんにそそうのないようにと申しつかっておりまして……、空港からホテルへのご案内もわたくしがさせていただきますが、どうかご心配のないように……何かありましたらいつでもご連絡ください」
「はい……よろしくお願いします」
意外なことばかりで狐につままれたような思いのまま、二泊三日のスケジュールで航空便を予約した。

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