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第10章 つらい報せ

光が私の部屋に来るようになってから、互いの家を行き来しては甘い時間を過ごし、私達の関係はより深いものとなっていった。このまま一緒に暮らすようになって、結婚するんだ……漠然とそう思っていた私のもとへ、頭から冷や水をかけられるような報せが入ってきた……。

「転勤……！？ほ、香港……！？」
「うん……まいった。このタイミングかよ、って……まぁ、半年だけど」
光が勤めるサキガケ商事はそれなりに大きな会社だ。考えてみれば転勤はじゅうぶんにあり得ることだった。けれど本当に何故このタイミングで……！と、神様の悪戯を呪った。せめて結婚してついていける立場になって身辺整理ができてからなら……。
「離れたくない……。けど今の状態で千代も一緒にとは、会社に言えないし……この転勤は大きなチャンスだし……」
「うん、わかるよ……仕方ない、仕方ないよね……半年……うん……」
あまりに落ち込んで、仕方ないという言葉以外に見当たらなくなっていた。光も同じ気持ちなのが痛いほどわかって、それが救いだった。

「……ねぇ光、いったん……別れる？」
「えっ……！？何言ってるの千代」
光の家での情事のあと、シーツだけを纏ったベッドで私は今後の話を切り出した。
「だって……、海外の遠距離恋愛なんて……、半年だって光、無理でしょう？」
「セックスのこと？」
「うん……向こうで良い相手がいたら……離れてて何もしてあげられない私よりも……そっちでうまくやってくれれば……」
「はぁ……もう……、千代、何言ってるんだよ……。いいのかよそれで。オレは嫌だけどな、千代が他の男に抱かれるなんて。考えただけでぶん殴りたくなる」
「そんなこと……私は、自分でするのに慣れてるから……待てるよ」
「でもいいんだな？千代は。オレが他の女を抱いても。赴任先で出会った人とヤりまくってもいいってことだろ？」
「いいって言うか……仕方ないんじゃないの？」