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桃色フラストレーション
第16章 一日だけのデート
快晴の土曜。病院での用事を互いに済ませたあと、遊園地にやってきた私達。家族連れやカップル、学生グループで賑わう地元の遊園地は、その空気だけで開放感をくれた。
「やー、久しぶりだなここ来るの」
「私も。懐かしい」
「東京の遊園地とかは行ってないのか?」
「うん……そういえば、行ってない」
東京に出て……、私がしていたことは、仕事と飲み会と……セックスぐらいだ。と、改めて気付かされる。デートらしいデートなんてしたことがない。
「じゃあ、まずはあれ乗るか?」
「ええー!」
高崎くんの、少し強引だけど楽しくて優しいリードで、手を繋いであちこち回ってアトラクションを楽しむ。合間にランチをしたりソフトクリームを食べたり……、まるで少女漫画みたいな健全なデートが進んで行く。

「なんか……楽しい」
ふと本音をこぼすと、彼も言った。
「うん、俺も。……それに桃井が楽しいって言ってくれて嬉しい」
嘘のない笑顔が向けられ、胸が高鳴る。高崎くんみたいな人が彼氏だったら……、幸せなんだろうなぁ……と思ってしまう。

でも、ダメ。ダメなんだ。いくらそのままでいいと言ってくれる彼だって、私が東京に戻って遠距離になればきっと……互いに崩れていく。こんな良い人とそんな風に仲を壊してしまいたくない……。光や純くんとの仲みたいには……したくない。そう思うと同時に、もし光ともこんな明るいデートから始まっていたら、どうなっていたんだろう……?と、観覧車に乗って遠い空を眺めながら、想像してしまう。

「……ね、隣行っていい?」
「え!?あ、ああ、うん」
高崎くんが隣に移動してきて、少し観覧車が揺れる。
「わっ」
「おっと、グラッときたな」
自然に、腰に手が回ってくる。ずっと手を繋いではいたけど、この距離はちょっとドキドキする。
「なぁ、桃井……。俺、やっぱり桃井が好きだ」
相変わらず唐突でストレートな言葉に、何も返せない。
「桃井はきっと……そうでもないんだろうけどね」
ほんのり残念そうな表情で、はにかむように笑う彼に、胸が締め付けられる。
「こないだ桃井が俺の気持ち、嬉しいとか幸せって言ってくれて……、なんか俺はそれだけで満足したって言うかさ。……でも遠距離だったら付き合えない、っていう程度には、俺ってそうでもないんだよなーって……もちろんちょっと悔しさもあって」
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