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影に抱かれて
第13章 再生
その日から、フランクール家の雰囲気は一変した。
……いや、変わったのはジュールだった。ジュールが変わっただけで、屋敷は太陽を取り戻したかのように明るくなったのだ。
以前のように快活になり、積極的に家業に取り組む意思を周囲に伝えると、翌日からジャンと共に自ら商談にも出向くようになった。
領地を管理し、境界線を調査する。そして農地を賃貸し、借地料を徴収する……そんな代々の仕事を、聡明なジュールはすぐにこなした。
その仕事ぶりは見事なもので、十や二十も年長の相手を前にしても怯むことなどない。まだ若造だと侮る相手などは、ジュールに手玉に取られ、逆に恥をかいてしまうような始末だった。
その上ジュールは地域で栽培される薔薇の新たな流通方法を考え、そこから得た利益を投資するなどの積極的な運営にも乗り出した。リュヌが学んできた最新の経済学も活かされ、商談の場には時折同行し、家令としての仕事を肌で学んだ。
ジュールの、そしてフランクール家の役に立つこと……それが目標だったリュヌにとって、それはとても嬉しいことだった。休学中の身であるとは言え、学園で学んできた知識は無駄では無かったのだ。
しかし、ジュールからの復学の許しは出そうもなく、リュヌもまた求めることはなかった。離れて過ごした二年間は二人にとって思い出すのも恐ろしいものだった。