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影に抱かれて
第18章 エピローグ
「リュ――ヌ!」
遠くからジュールの声がする。
その声を聞いたイネスの肩がびくりと震え……手にしたはさみを一瞬強く握り直したことにリュヌは気付かなかった。
そして、まるで聖母のような慈しみ深い瞳で息子を心配そうに見つめていることも。
「ああ、行かなくちゃ……母さん、でも僕は幸せなんだ。本当だよ? たったひとつのものを手に入れたんだから……だって、愛しているんだ。だから……だから……」
言葉に詰まったリュヌが走り出すのをイネスは黙って見送った。
そして、次の枝に手を伸ばし歌の続きを口ずさむ。
「――そうやって探し続けて、何を見つけたのかはわからない――でも知ってるよ。二人の後ろで扉が閉まったことをね――」
イネスのその瞳には、何かが確かに宿っていた。
それは母の愛か、それとも、神の……
Fin