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影に抱かれて
第3章 嵐の午後

青空にもくもくと立ち上る入道雲が夏の盛りを告げている。今日も二人は塔の下の庭園で秘密の時間を過ごしていた。

この時期は秋咲きの薔薇が少し蕾をつけているだけで、春のような華やかさはない。そのため、この場所に人が近付くことも少なかった。

二人はいつものように口付ける。

今日は家庭教師が探しに来る心配もない。勉強をさぼることが無くなったジュールに、誰も文句を言わなくなっていたのだ。やるべきことをしていれば大人は干渉しないということを、ジュールは学んでいた。

リュヌが目を閉じてジュールの唇を感じていると、舌先が唇をなぞってくるのが分かる。最近よくジュールがするその動きに、リュヌは畏れを感じていた。

それは、この先は世界が違うというような……漠然とした不安だった。

いつもならすぐに身体を離すのに、今日はベンチにもたれかかるリュヌにジュールは半ばのしかかるように身体を預けている。

リュヌは焦っていた。

しかしその時、突然ゴロゴロゴロ……と遠くから雷の音が聞こえ、大粒の雨がポツポツと二人の上に降り注ぎ始めた。

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