この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
影に抱かれて
第3章 嵐の午後
青空にもくもくと立ち上る入道雲が夏の盛りを告げている。今日も二人は塔の下の庭園で秘密の時間を過ごしていた。
この時期は秋咲きの薔薇が少し蕾をつけているだけで、春のような華やかさはない。そのため、この場所に人が近付くことも少なかった。
二人はいつものように口付ける。
今日は家庭教師が探しに来る心配もない。勉強をさぼることが無くなったジュールに、誰も文句を言わなくなっていたのだ。やるべきことをしていれば大人は干渉しないということを、ジュールは学んでいた。
リュヌが目を閉じてジュールの唇を感じていると、舌先が唇をなぞってくるのが分かる。最近よくジュールがするその動きに、リュヌは畏れを感じていた。
それは、この先は世界が違うというような……漠然とした不安だった。
いつもならすぐに身体を離すのに、今日はベンチにもたれかかるリュヌにジュールは半ばのしかかるように身体を預けている。
リュヌは焦っていた。
しかしその時、突然ゴロゴロゴロ……と遠くから雷の音が聞こえ、大粒の雨がポツポツと二人の上に降り注ぎ始めた。