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影に抱かれて
第4章 雲に隠れて
その年の冬。
寒さで空気もピンと張りつめたように感じられる朝、リュヌは突然、フランクール伯爵の私室に呼び出されていた。
庭師であるリュヌが主の居住区域に立ち入るのは初めてのことで、自分が何か重大なミスでも犯したのかと少し不安な気持ちでリュヌは扉をノックした。
「リュヌか、入りなさい」
扉を開けると、そこには伯爵だけでなく、夫人と……その奥にはジュールもソファーに腰をかけている。
さらには手前の窓際にジャンまで立っていて、これはただ事ではない……という思いをリュヌは強くした。
伯爵とジャンの表情が意外と柔らかいことは救いだったが、その反対に夫人の表情は固く、何を考えているのか読み取るのは難しかった。日頃から神経質そうにしかめられている眉間にも今朝はさらに深い影ができているのだ。
一体、何が……
リュヌには全く心当たりが無かった。
一歩進み、夫人の奥にいるジュールを盗み見ると、腕組みをし、足も高く組んで窓の外を険しい表情で睨んでいる。かなり苛立っているようだ。
「旦那様……何の御用でしょうか」
しかし、厚みの感じられる絨毯に跪き、神妙な表情でそう問いかけると……伯爵は声を上げて笑い出した。