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影に抱かれて
第5章 甘く、苦い……

「ジャン……ジャン・ブレーズ! ここへ……早く!」

叫ぶ夫人の前で、ジュールはリュヌが放ったものを飲み下し……何も言わず暗い表情のまま、リュヌの衣服を整えている。

その瞳に浮かんでいるのは諦めの表情だろうか……どちらにしても、とんでもない場面を母親に目撃された十一歳の少年とは思えない落ち着きぶりと言えた。

リュヌはただ、呆然と立ち尽くすだけだ。

しかし、そこへ慌ただしくジャンがやって来ると……さすがのジュールも観念したように壁へ手を突き、うなだれる。

ジャンは初め、三人のただ事ではない様子に息を飲んだが……すぐに夫人と二言三言会話をし、遅れて駆けつけてきた使用人を数人を残して下がらせた。

「ジュール様は体調がお悪いそうじゃ。皆でお連れしなさい。ジュール様、後程私が参りますまでお部屋でゆっくりとお休みくだされ。くれぐれも……安静に」

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